ナンピンとは、含み損になっているポジションをさらに売買する行為のこと。FX手法の一つである「ナンピン」をネット上で検索すると、「ナンピン最強」という説や「ナンピンはリスクが大きすぎる」といった説などさまざまな評判・口コミがヒットします。
今回は、ナンピンが本当に最強なのかどうか、を詳しく検証していきたいと思います。
ナンピンとは何か?
FX初心者にとってナンピンという単語は聞き慣れないという方も多いかもしれませんが、ナンピンとは漢字で「難平」と書きます。これには「難を平均する」という意味があり、実際のトレードにおいては「含み損になっているポジションを、さらに買売する行為」のことを指します。
たとえば、購入時のポジションから2円下がったとすると、この場合にはもう一度2円が上がらなければ、プラスマイナスゼロにはなりません。しかし、2円下がったタイミングで同じLot数の購入をすることによって、1円上がるだけでプラスマイナスゼロにすることができるのです。
やはりナンピンは最強なのか?
SNSやネット上では、「ナンピンは最強」という説や「ナンピンはリスクやデメリットが大きいからやめたほうがいい」という説など、さまざまな意見が飛び交っていますが、本当のところはどうなのか気になっているトレーダーの方も多いことでしょう。
結論から言えば、「ナンピン最強の説は間違っている」と言えます。
確かにナンピンと他の手法を組み合わせることによって、最強に近い方法を構築することは不可能ではありません。ただし、「ナンピンだけやっていれば問題ない」「ナンピン単独の手法が最強」ということにはなりません。なぜなら、FXの取引は不確実性が高く、先述した「1円上がればプラマイゼロになる」ことも実際には本当に上がるかどうかは誰にもわかりません。場合によってはそれ以上に下がる可能性もあり、その際にはさらに損失が広がることになります。
また、ナンピンは「損切がおろそかになりやすい」「損切出来ないジレンマに陥りやすい」といったリスクがある点にも注意が必要です。過去にナンピンを一度でも成功した経験があると、今回もナンピンを続けて大丈夫だろうという心理が働きやすくなります。損切が出来ないとどんどん損切が増えてしまい、最終的には耐えきれずロスカットに合ってしまう、というケースも少なくありませんので注意しておきたいところです。
つまり、ナンピンは「損失をゼロにする方法として理論上できないことはありません」が、実際の取引においてはリスクが非常に高いということはしっかり覚えておきましょう。
もしナンピンをやるならどんな人に最適?
とはいえ、絶対にナンピンをやめたほうがいい、とも言いきれません。FXトレーダーの中には、ナンピン手法が向いている人も確かにいます。
具体的には、
- 中級以上のトレーダー
- 根拠のあるFXトレーダー
- 複数のトレード手法を組み合わせられるトレーダー
などが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
中級以上のトレーダー
中上級以上のトレーダーとは、
- 長年にわたってFXを行っており、FXのイロハを熟知している
- 淡々と損切が出来る強いメンタルを持っている
- テクニカル分析のノウハウがある
- チャート反転のタイミングが予測できる
といったものを指します。
こうしたトレーダーであれば、トレードの分析やチャートの予測などがある程度正確に行えるため、ナンピン向きと言って良いでしょう。
根拠のあるFXトレーダー
FXをするにあたって、ネットやSNSの情報に振り回されたり、巷で良いと言われている手法をなんとなくやってみたりと、やみくもに(根拠なく)トレードを行っている方にはナンピンは不向きです。
一方で、「こうした条件になった場合にナンピンの手法を使う」といった明確な指標やルールを自分の中に持っている方にとっては、取り入れてみる価値のある手法です。ナンピンをやることを決めたら「含み損がどこまできたら損切を行うのか」といった自分の中での基準を定めておき、それに従った判断や取引を行うことが大切になります。それが確実にできるトレーダーであれば、ナンピンにチャレンジしてみても良いでしょう。
複数のトレード手法を組み合わせられるトレーダー
上記に重複する部分でもありますが、戦略的にナンピンを使えるトレーダーは、それを手法の一つとして自らのトレードに取り入れることもあります。プロトレーダーの中にも、徹底したリスクコントロールのもとで戦略的にナンピンを行っている人は少なくありません。
また、短期的な利益を出すことを目的にするのではなく、長期的な運用で投資をしていくといったケースでナンピンが使われる場合もあります。
いずれにしても、戦略に長けていること(複数の手法を使えること)や相場の動きを読めるトレーダーでなければナンピンを取り入れるのは至難の業です。ナンピンを成功させるためにはかなりのFXトレード経験が求められることは言うまでもありません。
ナンピンに手を出すのは避けたほうがいい人
では、逆にナンピンに手を出すのは避けたほうがいい人を見ていきましょう。
それは、
- FX初心者
- 含み損があると冷静な判断が出来なくなる人
- 戦略や方針が無く、感覚でトレードする人
の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
FX初心者
基本的に、ナンピンが使いこなせるのは「FXトレードの経験が豊富」かつ「戦略的で冷静な判断が出来る人」という条件を満たしている中上級以上のトレーダーになります。
しかしFX初心者の方は、「FXトレードがどういうものなのか、まだよくわかっていない」という方も多いことでしょう。そのため、「どんな基準でナンピンを使うのか」「どこで損切を行うのか」といった明確な自分のルールを決めていない(または決められない)場合や、正確に判断ができない場合には、ナンピンには手を出さないほうが無難です。
含み損があると冷静な判断が出来なくなる人
FXトレーダーの中には、「含み損があると追い込まれているような気になる」「含み損が発生して冷静な判断が下せなくなる」という人も少なくありません。
冷静な判断が出来ていない状態でナンピンの手法を利用すると、泥沼にはまってさらに損出を生む可能性があるため、こうした人にナンピン手法は不向きです。なぜなら、こういったタイプのトレーダーは「負けを取り戻すためにナンピン手法を使おう」「またナンピン手法を使えば、以前のように損失を取り戻せるかもしれない」と安易な発想になりやすいため。
メンタルの強い人であれば、含み損が発生しても動じることなく「あくまでも利益を出すための一過程」と考えられるのですが、FX初心者やFXトレードに慣れていない人は、どうしても目の前の事象に一喜一憂してしまいがちなので、なるべくナンピン手法を行うのは避けたほうが良いでしょう。
戦略や方針が無く、感覚でトレードする人
自分の中で明確なトレード戦略や本心が無く、感覚でトレードする人も、ナンピンを使うのには向きません。
FXトレードにおいて「ここから下がることは無いだろう」「きっと反転するだろう」「いつか勝てるだろう」といったなんとなくの感覚でトレードをしている人は、非常にキケンです。FXトレードは1回きりで終わるのではなく何度も何度も繰り返し行うものですから、最悪の状況が起きる可能性も大いにあります。
自分がトレードしている間に「そんな悪いことは起きないだろう」という考えを持っている人は、ナンピンだけでなく、そもそもFXトレード自体向いていないと言えるでしょう。
どんな時にナンピンは有効か?
一般的に、相場には
- トレンド相場・・・上がり下がりを続ける傾向にある
- レンジ相場・・・一定の幅で上下を繰り返す
という二つのタイプが存在します。
このうち、ナンピン手法を有効に使えるのはレンジ相場です。レンジ相場は、細かな反転を繰り返すという特徴があるため、ナンピンの手法を上手に利用すれば損出を回復させることも可能でしょう。
一方のトレンド相場は、基本的に反転しにくい傾向がありナンピンには向かないと言われています。もちろん反転するタイミングを予測できるならばナンピン手法を使用しても問題ないですが、それが予測できるトレーダーは極めて稀です。そのため、ナンピンを導入するなら「レンジ相場」の際に利用するのが良いでしょう。ただし、レンジ相場は値動きが予測しにくいので、いずれにしても初心者には不向きです。
こうしたリスクを踏まえてもなお「ナンピンをやってみたい」と思うのであれば、投資はあくまでも自己責任であることをよく理解したうえでチャレンジするようにしましょう。
まとめ
今回はナンピン最強説について詳しく解説していきました。
結論から言えば、経験の浅い初心者トレーダーや戦略・分析のできないトレーダーがナンピン手法を取り入れるのは非常にリスクがあり、あまりおすすめできません。ただし、中上級以上のトレーダーが手法の一つとして取り入れることや、他手法と組み合わせて利用することにおいては、一定のメリットが期待できます。
そのため、完全にナンピン手法を捨て去ってしまうのではなく、現在の自分のトレードスキルをよく見極めてから、取り入れるかどうかを見極めると良いでしょう。